第4巻

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紫色の波線

コメント

社会主義への道を行く[エッセイ]
アレン, 2001/10/27
 このエッセイが書かれたのは、デフレで失業問題に悩まされているという時代であり、何か妙案はないかということで、安部を含めた十人の知識人にコメントを求められたことに応じて書かれたもののようである。現代日本もまた同じ問題に直面しており、安部の意見が注目される。
 失業保険法第三条によると、「失業とは、労働の意志および能力を有することにもかかわらず、職業につくことができない状態にあること」だそうである。そこで、安部は「失業者を消滅させることなど、きめめて簡単であるといわなければなりません。」として、次の三つの根本原則を導き出している。

イ、労働の意志をうばい去ること。
ロ、労働の能力を破壊すること。
ハ、就職せしめること。

いかにも、安部らしい皮肉ではないか?本気を冗談の形式で言う人間は多いが、冗談を本気の形式で言う人間は希有だ。

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