第2巻

安部公房全集を楽しもうへ戻る
安部公房解読工房へ戻る

紫色の波線

コメント

二十代座談会 世紀の課題について[座談会]
上野光平・小林明・関根弘・中田耕治・中野泰雄・宮本治
アレン, 2002/01/27
 世紀の会会員たちによる座談会である。二十代というのは、年齢としての二十代と二十世紀をかけてのものだそうである。世紀の課題というのを探していこうというのが主旨のようであるが、話は一向にまとまらないまま、後半で安部の創作方法の話に移っていく。
 ここで特筆すべきは、安部の自立性・特異性が既に見受けられることだ。実存主義だろうとコンミュニズムだろうと、文学を創造するためには、何でも使おうという貪欲さがいい。中田氏にそれがプラグマティズム的と指摘されるが、安部はそれに対して
ーーー引用開始ーーー
「プラグラマティズムに共通しているという?・・・・・・ぼくは、実存主義者でもコンミュニズムの小説書きでもないんだ。」
ーーー引用終了ーーー
と言い放つ。
 また、関根氏は、コレクティヴな方がいいとか、安部の創作方法を無意味になるかもしれない創作方法とか言っているが、正直関根氏の考えはつまらないと思う。確かに、自然科学の分野では、共同研究・組織は必要不可欠だが、文学・芸術分野に適用してもつまらないものしかできないだろうと思わざるを得ない。
 私は、創作それ自体に意味があるという安部の意見に賛成したい。文学におけるあるべき姿なんてものを作ってみても、それは文学を制限することにしかならないからだ。

安部公房全集を楽しもうへ戻る
安部公房解読工房へ戻る